国籍離脱は必要?国ごとに異なる帰化後の手続きと注意点|インド・中国・アメリカ・韓国など10か国の制度比較
はじめに|なぜ「国籍離脱」の理解が必要なのか?

日本に帰化するということは、単に日本国籍を取得するという意味だけではありません。
実際の帰化手続きでは、「これまで持っていた国籍をどうするか」という「国籍離脱の問題」が発生します。
日本は国籍法により原則として二重国籍を認めておらず、帰化申請時には「外国籍を離脱することに同意します」という趣旨の誓約書も提出します。
そのため、帰化許可が下りた後には、多くの方が「本国籍の離脱証明書」や「喪失通知書」などの提出を求められるケースがあります。
しかし、国によって制度は大きく異なり、
- 自動で国籍を失う国
- 離脱申請が必要な国
- 離脱手続きがそもそも存在しない国
など、対応はさまざまです。
この記事では、主要な10か国をピックアップし、それぞれの「離脱制度の有無」「証明書の取得方法」「実務的注意点」について詳しく解説します。
日本の制度上|帰化と二重国籍の関係

日本の国籍法第11条第1項には次のように書かれています:
「日本の国籍を取得した者は、取得の時に外国の国籍を有していたときは、原則としてその外国の国籍を離脱しなければならない。」
これに基づき、帰化許可申請の際には「他国の国籍を離脱する意思がある」旨の誓約書を提出します。
ただし、これは「離脱完了が帰化の必須条件」という意味ではなく、制度上離脱が困難な国や手続きに時間を要する国については“離脱努力”があれば許可されるのが実務です。
つまり、帰化後に以下のような確認が行われます:
- 離脱が法的に可能な国かどうか
- 申請者が実際に離脱の申請を行ったか
- 証明書や補足資料が提出されているか
これらを踏まえたうえで、次のセクションからは国別に具体的な対応を見ていきます。
国別解説10か国
🇨🇳 中国(中華人民共和国)

■ 離脱制度の概要
中国は明確に二重国籍を禁止している国です。
中国国籍法第3条により、「中華人民共和国は二重国籍を認めない」と明記されています。
そのため、外国籍(日本国籍など)を取得した場合、原則として自動的に中国国籍を喪失します。
■ 実務上のポイント
ただし、中国では自動喪失といっても、「喪失証明書」のような公式文書を取得する制度は基本的に存在しません。
そのため、日本の帰化審査においては、以下のような書類で補完することが多いです:
- 日本国籍を取得したことを証明する書類
- 中国国籍法に関する制度説明文(日本語訳付き)
- 在日中国大使館・領事館に確認した旨の文書など
※近年は帰化許可後、中国パスポートの返納等を通じて暗黙のうちに「離脱済」と扱うケースも増えています。
■ 特に注意すべき点
- 中国側で国籍喪失証明を求めても発行されない
- 面談では「中国籍でないことの説明」が求められることもある
- パスポートを複数所有していた場合は全て返納が必要
🇰🇷 韓国(大韓民国)

■ 離脱制度の概要
韓国も原則として二重国籍を禁止しています。
ただし、特定の条件(例:満20歳未満での取得・特例永住者など)では二重国籍が認められるケースもあり、制度的には例外規定が多い国です。
■ 離脱手続きと証明
帰化後に韓国国籍を離脱するには、在外韓国公館を通じて「国籍離脱申告」を行い、離脱証明書(국적이탈확인서)を取得する必要があります。
この手続きには次の書類が必要です:
- 日本国籍取得を証明する書類(戸籍謄本等)
- 韓国の住民登録・家族関係証明書
- パスポート、国民登録証などの返納
■ 実務上の注意点
- 離脱申告には面談や審査が入ることもある
- 取得までに1~2か月かかるケースあり
- 特例永住者の場合は、国籍離脱の要否が制度によって異なるので注意
🇵🇭 フィリピン

■ 離脱制度の概要
フィリピンでは、外国籍を取得した場合、自動的にフィリピン国籍を喪失するとされています(Philippine Commonwealth Act No. 63)。
ただし、**RA 9225(Dual Citizenship Act)**により、一度失ったフィリピン国籍を「再取得」する制度も存在します。
■ 離脱証明の実務
- 多くの場合、帰化許可後にフィリピン国籍の「喪失証明書」や「パスポートの返納証明」が必要とされます。
- しかし、フィリピン大使館では証明書が発行されないことも多く、その場合は下記のように対応します:
- 離脱手続きに関する制度説明文
- 大使館とのやりとり記録
- 返納済パスポートのコピー
■ 注意点
- フィリピンは再取得制度があるため、「なぜ再取得しないのか」と問われることもある
- 書類が整わない場合、日本側での書面説明が必要
🇻🇳 ベトナム

■ 離脱制度の概要
ベトナムは基本的に二重国籍を認めておらず、外国籍取得による自動喪失とはならないため、明示的な離脱手続きが必要です。
■ 離脱手続きと書類
- 帰化後、在日ベトナム大使館に対して「国籍離脱申請」を行い、喪失証明を取得する必要あり
- 申請書類はベトナム語が原則で、翻訳や公証が必要な場合もあり、非常に煩雑
■ 注意点
- 離脱申請が承認されるまで数か月~1年かかることもある
- 本国側からの書類要求が多く、個人での対応が困難なケースもある
🇮🇳 インド

■ 離脱制度の概要
インドでは、外国国籍を取得した時点で自動的にインド国籍を喪失すると、明確に国籍法(Citizenship Act, 1955)に定められています。
しかし、日本の帰化手続きでは「自動的に喪失したはず」と言うだけでは不十分であり、離脱を証明する公式な書類の提出が強く求められます。
■ 離脱手続きの流れ
- インド大使館・領事館に「国籍放棄申請(Renunciation of Indian Citizenship)」を行う
- 旧インドパスポートの返納+コピー提出
- Self Declaration(自己申告書)の記入
- 約2〜3か月で**Renunciation Certificate(国籍放棄証明書)**が交付される
■ 注意点
- 行政書士による代理申請は不可。必ず本人が申請する必要があります
- 書類不備や誤記があると差し戻され、数か月以上かかるケースも多い
- 離脱完了前に日本側での戸籍登録が滞る場合もあるため、早めの対応が推奨されます
🇵🇰 パキスタン

■ 離脱制度の概要
パキスタンは限定的に二重国籍を認めており、イギリス・アメリカなど一部の国に限っては容認されています。
しかし、日本との間では基本的に二重国籍は認められておらず、帰化後の離脱が必要とされます。
■ 実務上の対応
- 在日パキスタン大使館を通じて離脱証明書の発行を申請
- 国籍放棄申請書、パスポート返納、国民番号(NIC)などの関連書類提出
- 証明書が出るまでに非常に時間がかかるケースがあり、発行自体ができないことも
■ 注意点
- 「手続きが存在しない」「大使館が発行してくれない」といったケースでは、説明書(英文+和訳)を添付して代替対応する
- 書類の揃い具合によっては、担当官の判断により受理・不受理が分かれることがあるため、事前相談が重要
🇬🇧 イギリス

■ 離脱制度の概要
イギリスは完全に二重国籍を認めている国であり、他国の国籍を取得しても、自動的にBritish nationalityが喪失されることはありません。
また、国籍離脱も義務ではなく、本人の希望により申請することができる自由制度です。
■ 日本側で求められる対応
- 帰化後もイギリス国籍を保持し続けることは可能
- ただし日本側(法務局)では、「なぜ離脱しないのか」「制度上離脱が不要であるか」などの説明が求められます
- **UK Home Officeの制度説明資料(英文+和訳)**を添付すると非常に効果的です
■ 注意点
- 「離脱手続きをしていない=不誠実」と捉えられる可能性もあるため、意図的に維持している理由を説明できるように準備しておくと安心です
- 帰化後も英国パスポートを保持している場合、日本側でトラブルにならないよう慎重な運用を
🇺🇸 アメリカ

■ 離脱制度の概要
アメリカもまた、二重国籍を明確に容認している国のひとつです。
合衆国憲法や関連法令により、他国の国籍を取得しただけではアメリカ国籍は喪失しません。
■ 離脱の手続き(原則不要)
- 離脱を希望する場合は、米国大使館にて**“Renunciation of U.S. Citizenship”**という別の手続きを取る必要があります
- ただし、これには多額の手数料(2,350ドル)と面接が必要で、通常は行われません
■ 日本での対応
- 多くの場合、「米国国籍を離脱していないが、制度上の制約によるものである」といった説明を行います
- 補足として米国国籍法の抜粋(英語・和訳)や在日米国大使館のウェブサイト情報を添付
■ 注意点
- 面談で二重国籍について問われた際に曖昧な説明をしないこと
- 帰化後に「どちらの国籍でどんな活動をしているか」についても質問される可能性がある
🇧🇷 ブラジル

■ 離脱制度の概要
ブラジルは二重国籍を原則として認めており、他国籍を取得したとしても、自国籍が自動的に喪失することはありません。
ブラジル国籍を離脱したい場合は、本人の意思により「放棄申請(Renúncia)」を行うことができます。
■ 実務的な対応
- 多くの申請者は、国籍離脱手続きを行わずブラジル国籍を維持しています
- 日本側では「制度上離脱義務がない」「帰化後は日本国籍として生活する」旨の説明文+制度解説資料を添付して対応します
■ 注意点
- 一部の法務局担当官は「離脱しないのは問題」と捉える場合もあり、事前相談のうえ対応方針を統一するのが望ましい
🇳🇵 ネパール(または🇧🇩 バングラデシュ)

■ 離脱制度の概要
ネパールおよびバングラデシュのような国では、国籍離脱手続きそのものが非常に煩雑あるいは存在しないケースがあります。
また、手続きはあっても、証明書の発行が機能していない、書類が届かないといった事例も多く見られます。
■ 日本での対応
- 本人が可能な限りの「離脱努力を行ったこと」を証明する
例:
・在日大使館とのメールやりとり記録
・手続き申請書のコピー
・制度上発行が困難である旨を説明した文書
■ 注意点
- 「制度上できない国」として柔軟な運用はされやすいが、誠実な説明があることが前提
- 書類提出前に法務局へ確認・相談しておくとスムーズ
帰化後に想定されるトラブル事例と注意点

帰化許可が下りたあとも、「国籍離脱」というテーマで思わぬトラブルが発生することがあります。以下に、よくあるケースを紹介します。
📌 ケース①:離脱証明が出ない → 戸籍登録が保留に
例:フィリピンやパキスタンなど
離脱申請をしても証明書が発行されない、または「そもそも制度が存在しない」といった理由で、帰化後の戸籍作成が一時的に保留になることがあります。
▶ 解決のヒント:
- 行政書士と相談し、補足説明文(制度説明・努力証明)を添付
- 大使館からの返答(「証明書を発行していない」等)を文書で取得しておく
📌 ケース②:二重国籍を維持していることを咎められる
例:イギリス・アメリカ・ブラジルなど
帰化後も旧国のパスポートを保持していたり、制度的に離脱が不要な国の場合でも、担当官に「離脱の意思がないのでは」と誤解されることがあります。
▶ 解決のヒント:
- あらかじめその国の制度を説明する文書を準備
- 「制度上、離脱申請が不要または存在しない」旨を明確に文書で提出
📌 ケース③:帰化後に外国の行政手続きでトラブル
例:パスポート更新や銀行口座手続き
帰化後に旧国籍のパスポートが使えなくなっていたことに気づかず、現地機関での本人確認ができなくなったり、罰則の対象になってしまうことも。
▶ 解決のヒント:
- 帰化後すぐに旧パスポートの返納/無効化申請を行う
- 本国大使館に「日本帰化済み」であることを通知しておく
行政書士が支援できること・できないこと

✅ 支援できること
- 日本側の帰化申請手続きにおける国籍離脱の説明資料の準備
- 外国の国籍法に基づいた制度調査・日本語訳の添付
- 面談での説明方法アドバイス(対担当官)
- 本国書類の翻訳と整理(例:パスポート返納書、申請控など)
❌ 支援できないこと
- 本国政府への国籍離脱申請の代行
- パスポートの返納手続き
- 離脱証明の取得や進捗確認(これは必ず本人が行う必要があります)
まとめ|「帰化=終了」ではない。国籍離脱も含めて準備を
帰化申請というと、日本の審査や書類準備に意識が集中しがちですが、帰化後の「国籍離脱」というテーマも極めて重要な一歩です。
- 国によっては証明書が出ずに苦労する
- 逆に離脱が不要な国では、日本側で丁寧な説明が必要になる
- 手続きが煩雑な国では、許可が下りた後も数か月単位の作業が続くことも
だからこそ、事前に「自分の国はどのような制度なのか」「日本でどう説明すべきか」を調べ、できれば行政書士などの専門家の支援を受けておくことを強くおすすめします。
行政書士いしなぎ事務所まで
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